こんにちは
Smile Houseの妙加です。
下垂体は人の生命維持に必要な8種類のホルモン分泌&調整をしている器官。
下垂体の機能が低下すると一つまたは複数のホルモン分泌が乱れ、代謝、成長、生殖、情緒安定など様々な部分に影響が出ます。
あまり聞きなれない&症状がわかりにくい疾患ですが、脳ドックや内分泌量の検査で早めに発見できるので知っておいてくださいね。
下垂体機能低下症とは??
下垂体は前葉と後葉に分けられ、それぞれからホルモンが分泌されています。
■下垂体前葉から分泌されるホルモン6種
・副腎皮質刺激ホルモン
・甲状腺刺激ホルモン
・成長ホルモン
・性腺刺激ホルモン(黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモン)
・プロラクチン
■下垂体後葉から分泌されるホルモン2種
・抗利尿ホルモン
・オキシトシン
下垂体機能低下症は、通常、前葉から分泌されるホルモン量が低下している状態のことで、全てのホルモン分泌量が低下するだけでなく、一種類の分泌量が低下した場合も、下垂体機能低下症に当てはまります。
下垂体機能低下症の原因
下垂体の機能が低下する原因はいくつかありますが、最も多い原因は脳腫瘍です。
下垂体にできる腺腫(良性の腫瘍)が一番多いですが、下垂体付近に発生した腫瘍が下垂体を圧迫している場合もあります。
例としては、頭蓋咽頭種、ラトケ嚢胞、がんの転移などです。
腫瘍以外だと、
・放射線照射
・下垂体腺腫の手術で傷つけてしまう
・下垂体の炎症
・分娩時の大量出血
が原因としてあげられます。
今回は下垂体やその付近にできる腫瘍についてまとめています。
下垂体腺腫
脳下垂体前葉の細胞から発生する良性の腫瘍で、成人に多く、頭蓋内に発生する腫瘍の約17%を占めます。
脳下垂体腺腫は、腺腫自体がホルモンを出すものと、出さない腫瘍があります。
腫瘍がホルモンを分泌している場合、どんなホルモンを出しているかによって症状が大きく異なります。
ホルモン非分泌性腺腫
脳下垂体腺腫の4割はこの腺腫で、この腫瘍自体はホルモンを分泌していません。
そのため、症状は全ての腺腫に共通する「脳下垂体低下症」の症状が見られます。
具体的な症状としては視力や視野の異常、無月経、勃起異常、疲労感などです。
ホルモン非分泌性腺腫はかなり大きくなってから発見されることが多いのですが、最近では、健康診断で脳ドックを受けた時に発見されるケースが増えています。
プロラクチン産生腺腫
下垂体腺腫の3割はこの腫瘍です。
プロラクチンを大量に分泌するため、女性は無月経や乳汁分泌、男性は性欲低下や勃起不全になります。
プロラクチン産生腺腫は女性不妊症の原因になっていることも多いのですが、症状がわかりやすいため、異変を感じた時にすぐ病院へ行けば、腫瘍が小さい段階で発見することも可能です。
男性の場合は、症状が出ても原因が下垂体腺腫だということが、視力や視野の異常が出るまで気がつかないことが多いようです。
成長ホルモン産生腺腫
下垂体腺腫の約2割がこの腺腫で、成長ホルモンを大量に分泌します。
思春期までに発症すると巨人症(身長や手足が異常に大きくなる)、成人以降に発症すると先端巨大症(手足の先端、あご、くちびる、額、舌が肥大する)にります。
指輪や靴が入らなくなる、顔つきが急激に変わるなど身体的な症状が現れるので異変には気がつきやすい腫瘍です。
成長ホルモンが長期間高値だと、糖尿病、心不全、動脈硬化、直腸癌の発症率が上がり寿命が短くなるとされています。
副腎皮質ホルモン産生腺腫
下垂体腺腫の8%と少なく、クッシング病と呼ばれています。
男女比1:4と女性に多く、中心性肥満(手足よりも胸やお腹などの体幹が太る)と顔が満月様に丸くなることが特徴です。
ニキビがたくさんできる、体毛が濃くなる、骨粗鬆症、うつといった症状や、高確率で糖尿病と高血圧を合併します。
頭蓋咽頭腫
下垂体付近にできる良性の腫瘍で5-14歳までの子どもと40代以降(特に60代)に多く発生します。
頭蓋内腫瘍の4%をしめ、発生する場所によっては手術で取り除いても下垂体ホルモンの不足、認知機能障害、視力障害といった後遺症が残ることがあります。
手術の難易度が高く、場合によっては何度も手術を繰り返すことになります。
ラトケ嚢胞
ラトケ嚢胞は下垂体にできる袋状の腫瘍ですが、本来、胎児の時に存在していた袋が何らかの原因で消えずに残ってしまい、その袋の中に粘液がたまり大きくなったものです。
ホルモンは分泌していないので、下垂体機能低下症の症状や、視野障害などが主な症状です。
治療法は手術で中の粘液を抜くか、袋を切除するしかありませんが、自然消滅することもあるので見つかってすぐに手術が必要というわけでもありません。
胚細胞腫瘍
胚細胞腫瘍は生殖器(精巣や卵巣)、脳(下垂体や松果体)、後腹膜、仙骨部などにできる悪性の腫瘍。
頭蓋内腫瘍の3%を占め、10〜30代に多く発症します。
性線原発と性線外原発に分けられ、小児期は性線外原発が多いですが、青年期以降は9割が生殖器に原発腫瘍ができます。
下垂体が機能低下すると現れる症状
下垂体の機能が低下すると一つまたは複数のホルモン分泌のバランスが崩れます。
不足したホルモンによって出る症状と、機能低下によって共通する症状があります。
下垂体機能低下の症状
ホルモン産生腺腫は、腫瘍が分泌するホルモンは高値になりますが、それ以外のホルモン分泌量は低下します。
非ホルモン分泌の腫瘍や、下垂体付近にできた腫瘍の影響を受けた場合は下垂体機能低下症の症状が現れます。
具体的な症状は、
・月経不順や無月経
・性欲低下
・勃起不全
・うつ
・疲労感や倦怠感
(甲状腺や副腎皮質からのホルモン分泌量が不足すると、疲れやすさやストレス耐性が低下するため)
などです。
視力・視野の異常
脳下垂体は視神経に近いため、腫瘍が大きくなると視力低下や視野欠損といった症状が現れます。
多くの場合、両眼の上外側から見えにくくなり、次第に両眼の外側半分が見えなくなります。
この状態を両耳側半盲と呼び、脳下垂体腺腫の特徴的な症状です。
成長ホルモン欠乏症
小児期に成長ホルモンが不足すると、発育が悪くなり低身長症になります。
成長ホルモンは人の代謝機能もコントロールしているので、体脂肪の増加、糖尿病、筋肉量の低下、心疾患、動脈硬化、骨粗鬆症などの原因にもなり、疲れやすくなるため活力が低下します。
性線刺激ホルモン欠乏症
女性の場合は無月経や不妊、膣の乾燥、男性は精巣が萎縮して精子量が減るため不妊症になります。
子どもの場合だと二次性徴が現れないことがきっかけで気づくケースが多いでしょう。
甲状腺刺激ホルモン欠乏症
甲状腺の機能低下や、寒さ耐性の低下、肥満、便秘といった症状が現れます。
副腎皮質ホルモン欠乏症
このホルモンが不足すると副腎から、コルチゾールというホルモン分泌量が不足し、生命維持が困難になります。
症状としては、疲労、低血圧、低血糖、ストレス耐性の低下などがありますが、「風邪が治りにくい」「食欲が落ちて痩せた」など、自覚症状に乏しいので注意が必要。
プロラクチン欠乏症
女性の場合は月経不順、無月経、乳汁分泌、不妊といった症状が現れます。
男性は発症率が1/8と少ないですが、勃起不全や不妊症になります。
下垂体機能低下症の診断
診断は内分泌腺の機能とホルモンを分泌している各器官のホルモン量を調べます。
副腎皮質刺激ホルモンは、コルチゾールというホルモン分泌を促しているため、コルチゾールの量を調べることで判定できます。
コルチゾールの分泌が少なかった場合、その原因が副腎そのものにあるのか、下垂体にあるのかを調べ、治療方法を選択します。
また、成長ホルモンに限っては、分泌が脈動的で正常かどうかの判断が難しいので血中のIGF-Iという物質を測定します。
この物質は成長ホルモンの制御を受けて生産されるため、IGF-Iと成長ホルモンの量は比例関係にあるためです。
下垂体の機能低下は見逃しがち
下垂体機能の低下は生理不順や性欲低下、疲労感、倦怠感といった症状が主に現れるので、「少し疲れてるのかな」と見落としがち。
最近は脳ドックで発見されるケースも増えていますが、視野欠損の症状が出るまで気がつかない人もたくさんいます。
下垂体は人の生体活動に欠かせないホルモンを多く分泌しているので、1年に1度健康診断を受け、その時に脳ドックも受けておくと良いでしょう。
【下垂体から分泌しているホルモンについてはこちらの記事にまとめてあります】